アルバム 城下町の女

 

三橋美智也に託す…11人の作家の祈り  杉紀彦
夕やけの哀しい程に美しい場所のがあるとしたら、多分、それはどこかの城下町です
松の古木に降り積もっ雪が、恋の終わりを物語る場所があるとしたら、多分、それもどこかの城下町でしょう。
故郷を見失った人たちの心の、ふとした安らぎと懐かしさを与えてくれるまぼろし…
城下町のイメージはたとえば日暮れの灯のように淋しく暖かく、多くの日本人の胸にあると思われます。
そんな城下町にすむ女について、今、日本の流行歌を作っている作家たちは、どう言った情景を描くだろうか…。という話を三橋美智也さんと始めたのは昭和50年の秋も相当深まったころです。
数ある城下町と、その町を舞台にした女たちの生きざま、情念、あるいは愛の形を一つ一つ歌いこんでいけば そのどこかにももっとも日本的な流行歌が現れるに違いない…。
そんな願いをこめて三橋さんは何人かの作家をリストアップしました。
その中には初めて三橋さんの歌を書く人もあったし、長年の交流関係にある人もありましたが、すべての作家が非常に関心をもって練り上げた作品ばかりが、幸いにして集まったようです。
ある人は三橋歌謡にトライする喜びに満ちて、またある人は城下町の女性に女の原点を求めてーーーーー

 

三橋美智也―城下町の女
おどろくべき事に、詩も●も含めて作家たちの描写する世界は、それぞれの豊穣の作風を越えて、見事に一つのイメージに結ばれました。
ただ違うのは、そこにあるドラマだけです。
つまり、ここには第一線の作家たちが期待する三橋歌謡の理想像と、城下町というものに寄せる想いが、まさにオムニバスのように鮮やかに綴られているのです。

 

故郷を見失った時代に、どんな故郷とどんな女たちが詩人の胸の中にあるのか…。それが期せずして明らかになったわけです。
数多い大ヒットと、三橋流民謡歌手としての自負をもつ三橋美智也さんにこのアルバムは一つの貴重な財産として残るでしょう。
何故なら、この12作品の中に1976年歌手三橋美智也さんの果たすべき役割があるからです。
すれっからした時代に、魅惑の風雲を
日本の女のまぼろしの水々しさを
心安らぐ 懐かしい城下町を
日暮れの灯の淋しいぬくもりを
歌えるのは 三橋美智也さんだけなのです。

 

旅好きな若者たちは、今日も●●の小京都や城下町をさして旅立っていきます。
古き良き伝統ばかりでなく、街角ににじむ●●●の●や、失われていくものへの哀惜を感じるために。
「城下町の女」の移り香りは、きっと多くの人達にしみじみとした味わいを与えてくれるはずです。

 

原文でわからないところは●にしてあります。