うまくいかないことは、運命っていいますよね。手も足もでないかたつむりみたいな自分。たまには酒におぼれることもある。雨の中のカタツムリをみていると、そんなことを思う。
夢を持って東京にでてきて、がんばってみたけど、角も出せないこの始末。
こんな雨降りにはギター流しのしごともない、いっそのことともに語ろう、飲み明かそう。

 

なんてやさしい歌なんだろうと思います。東京という、生存競争の厳しい世界。その中で勝ち組でない人、負け組の人たちにあたたかい目が向いています。
作詩のたなかゆきおさんは「木枯らし子守唄」「雪のだるまさん」など、弱い人たちを暖かく包み込むような唄を作っています。小町昭さんは、「通りゃんせ小道」という心に残る名作があります。

 

三橋さんはどう歌っているでしょうか。

 

昭和36年の三橋美智也さんの声は、声の伸びと力強さに溢れています。

 

「こぉれぇもぉー さだぁめぇぇぇとぉー ひぃーとぉくぅぅちぃぃにぃー

 

   こぶし      こぶし           こぶしこぶし ビブラート

 

「いぃって しぃまぁえぇばぁ それぇまぁでぇさぁー」
          こぶし     こぶし 強くビブラート

 

「いちねん  さんびゃく ろくじゅう ごにち」
リズムカルに 弱く

 

「み  かぁけぇぇー ばかぁりぃぃの  ぉぉぉ
声をはる こぶし     こぶし    溜息声

 

「とぉぉぉ  きょうぉぉぉでぇ」
声をまるめる    こぶし 強ビブラート

 

「さぁけぇとぉ だぁぁきぃねぇんのぉ かたつぅむりいー」
こぶしこぶし     こぶし           ビブラート

 

 

 

「みかけばかりの東京で」が魅力的です。三橋さんの歌の中でも、最大級の魅惑的なさびの一つだと思います。

 

作家の先生方ではなくて、こぶしはぜんぶ三橋美智也さんにまかされていました。

 

ですから、三橋さんなしには、この歌のすばらしさは成立しなかったと思います。